武士に愛された楽器 鼓

鷹シリーズから「要」を紹介します。

全体的に赤と黒のコントラストが大変美しい兜収納セットです。「要」のポイントは大変目を引く赤い印伝吹返しと赤い忍緒。とても堂々として美しい兜です。後ろ姿は人気のある一番上が白で下が赤い縅しです。吹返しには魔除けの菱菊紋が描かれています。

飾台と屏風には「鼓」が描かれていますが、実は鼓は昔から武士に愛された楽器でした。鼓が重要な役割を占める能は織田信長をはじめとする多くの武将に愛され、江戸時代には式楽となります。徳川家光の時代には能は武士が正しい発音、豊な声量、優雅な身のこなしを身につけるために用いられ、「見て楽しむ芸」から武士・支配階級が鼓を打たせて「自ら演じて楽しむ芸」になっていきます。

気力、体力共に要求される能は「気合の芸術」とも言われる力強い芸能であり、直線的に気持ちよく破裂音が抜けていく鼓の音は武家の気質に合ったものだったのでしょう。上級武士は、戦に向かう前に不安や緊張を力に変える為に舞うこともあったそうです。そこから転じて今でも邪気を祓う雅な音として、豊かさを表す吉祥文様として定着したのでしょう。